わたしの地元には「農舞台」という「大地の芸術祭」関連の国際展示場があります
その常設展のなかに教室の壁や床、机がすべて黒板でできているという、珍しい作品もありました。なにもかもが緑色をしていて、そこにチョークで落書きできるようになっているのです
それは見たことのないほど豊かで、優しい作品でした。黒板ばかりではありません。机の引き出しを開けると、紙粘土や針金、駄菓子屋のおまけを用いた作品が隠れていました。この空間には、細部にまでひとの気配が満ちているのです
http://www.echigo-tsumari.jp/artwork/art_drawers
それなのに、わたしが入ったときには、そこにはだれもおらず、静かでした。ひとの気配に満ちているのにだれもいない。まるでこの魚沼の里山そのものではありませんか
ところでうえのように空間そのものを作品とした展示を、インスタレーションといいます
インスタレーションには、もちろん触ってはいけない作品がおおいのですが、なかには、入場者の足跡や動きの軌跡、落書きなどを残してもらい、それを含めて作品の完成とするようなものもあります
究極の例は、チームラボのような展示のことです(https://www.teamlab.art/jp/e/bandaijima/)
こうした場合、めいっぱい動き回らなければ作品を鑑賞したことにはならないのです
わたしが里山を豊かにしようと突き動かされ、床にしゃがみこんでおおきくディノニクスを描いていたとき(この画題にとくに意味はないです)、子どもをひとり連れた夫婦が入ってきました
子どもはわたしのようにこの黒板に夢中になって落書きをし、父親もはじめての光景にはしゃいでいるようでした。しかし、母親は彼らを見て心配げに、いかにも優しげに注意しました。
「書いたら消してください」
このひとはなんのために美術館に来たのか、とわたしは不思議でした
