引きこもり

大学卒業前、引越し先を既に決めていたわたしを、母は慌てふためいて無理やり実家に連行し、バイトや年金納入を酷く叱りました。成人を家に閉じ込めながら出ていけというのは単なる暴力ではないのでしょうか
しかし肉親というものは限られたスラングでしゃべるもので、ふつうの日本語による会話が成立しません
わたしがなにか、たんなる事実をいったとしても、それが彼らのスラングに照合できない斬新なものだった場合、意味不明な言語として無視されるのです


それでも万一、理解させたとして、親をまんまと謝らせてしまった子は、どんな気持になればいいでしょうか
そうおもって、わたしはいままで罵られるままにしていたのに、先週、機嫌のわるい母に底意地のわるいことをされたので、ついに事実を明かしてしまったのです



「オレは捨ててほしかったのに!」

「ハァ?捨てられるわけないでしょ。会ったこともないおじさんと同棲させる親いないっつーの。同棲したって絶対もどってくるよ」

「そうやって言い負かして、なにがしたいの」

「言い負かしたいんじゃない!」

「心配なら心配してるとだけいえばいーだろ。『死ね』としかいわないくせに」

「いつ」

「『働かないやつは生きてちゃダメ』ってことじゃん」

「そんなこといってない!」


反駁しながらも、まるで殺人鬼であるかのように罵られて、母はポロポロと泣きました




わたしは今回のことで、「働いて得るもの」や「生きていてはいけないことの証明」で書いたとおり、ひとは生きているだけで殺人鬼だ、そうでないひとはいない、という事実を、否定するつもりになったわけではありません

じつはうえのやり取りのまえに、母を平手で打とうとしてしまったのですが、彼女たちは社会から転落してしまった娘を、常識というちんこで、家族みんなで来る日も来る日も輪姦してきたのですから、それに比べれば、いえ、比べものにならないほど人道的で、建設的だとさえおもっています


しかし、そんな事実を見つめてなんになるというのでしょう


事実をしることは、それ以上のものではありません