軍オタ②

話は変わりますが、「APヘタリア」においてイギリスはほんとうに作者に大事にされているキャラクターのひとりだとおもいます
彼はいろいろな年齢と衣装で登場しておりそのバリエーションは連合国のなかで随一ではないでしょうか
AP1巻のころからあまり変わらないキャラクターもいるなかで、巻を重ねるごとに顔立ちや髪型が洗練されてもおり、大切に描かれているのがわかります



しかしWS4巻のメイドの話を読んで、わたしは違和感をもつことになりました


イギリスはメイド喫茶に来店した日本のまえに、執事すがたで登場します
日本はメイド喫茶なのにメイドがひとりもすがたを現さないことに疑問をもちました。でもイギリスはすこしも違和感がないらしく、イギリス人にとって執事をもつことがどれだけ名誉なことかを熱く語り、逆にメイドは家のなかでなるべく気配を消さなければならないのだと、堂々と説明して見せたのでした


女性は人格を認められず、存在しないかのように息を顰めなければならない…
正直、そんな不快なネタを、なぜあんなに大事にしていたイギリスにドヤ顔で話させたのか、わたしはおいてけぼりでした

いろいろなサイトの感想では、このマンガは「メイドがいないメイド喫茶」というギャグとしてウケているようです
わたしはそもそもそんなネタ使うべきではないとおもったのですが…


いつもぶっとんでいて、この世のあらゆる偏見差別のすべてをニヒルに笑い飛ばしている、あのひまさんのよさが、まったく消えてしまっているとおもえてなりませんでした





また、おなじ4巻に学校制服の話があります
そのページでは作者は、学校制服という文化が世界的に消え行く傾向にあることを訴えます
要約すると、制服はアレンジで個性を出すことができる。だから軍国主義的だという評価は極端だ。いまこそ日本の制服のアレンジ方法を、もっと世界にしってもらうべきだ、と主張しているようでした
キャラクターではなく、作者自身の解説で、思想をむき出しにしたのです



どちらかというと、わたし自身は制服排斥派として偏っているのを己でも認めますが、わたしはここで、擁護派の思想に腹を立てたといいたいのではありません
3巻までのひまさんなら、排斥派のわたしが排斥派であること自体を笑い飛ばせるようなギャグをくれたはずです
なのに、アレンジできるから個性があるだとか、そんな苦しい言い訳をしてまで、そしてギャグ漫画という手段を経ることを放棄してまで、思想をむき出しにしたことにゾッとさせられたのです
漫画――物語ってそんなものなのでしょうか




また話が飛びますが、温泉の話でも違和感がつよかったです

温泉大国ハンガリーに、チェコが温泉のうんちくで挑む話です
わたしは「ほんとうの温泉大国はじぶんだ」というチェコの知識の公正なことに胸打たれました。さすがにひまさんは偏らない博識なひとだと、おもい直そうとしたほどです


1、2巻では彼は、ローマ皇帝への根拠のない俗説を解消しようと、一生懸命漫画にしていたので、それなら今回も、これからチェコ視点の漫画を描いて、チェコの温泉の魅力を伝えてくれるのだ、とわたしはおもいました

ところが彼は明らかにチェコを、的外れで頭でっかちで、滑稽に描いてみせたのです
ハンガリーはモブおじたちがハンガリー国内の温泉の広告に釘付けになっているのを見かけました。そして「ほら、ごたくじゃないのよ」と内心チェコに反論します。ハンガリーの温泉には、名物、裸エプロンの入浴スタイルがあり、そのスケベ心のまえには理屈をこねても仕方がないと、作者はいいたいのです

かつての彼ならむしろこのおじさんたちのことをネタにしたはずなのに…なぜチェコの温泉のほうを嘲るのか、わたしは驚いてしまいました






3巻までのヘタリアなら、どんな歴史思想のひとでも、垣根を越えて笑えるようになっていたのに、何があったのでしょうか。もうあのころのニヒルな日丸屋秀和はどこにもいないのでしょうか

軍オタ…女性蔑視…下ネタ…だれかさんを思い浮かべざるをえません
ひまさんだけはほかの軍オタとはちがうとおもいたかったです