擬似男女カップル

耽美系を通らず、「おっさんズラブ」と「ユーリ!! on ice」「BANANA FISH」しか観たことのない男女が、BLに對してリアルのセクマイに對するかのように「偏見ないよ」と繰り返す樣に爲りました。此方はゲイの結婚を認めるか、と云う信仰告白を迫っているのではなく、俺女と云うものは〈正しい〉より〈面白い〉を基準に生きていること、そして耽美系のグロく重すぎる設定を好むことについて云っているのですが、その男女に耽美系のサブカルや近代の耽美主義文學を通って貰わないことには何を云っても駄目なので、私は最早ことわりを入れることもなくなりました。

おっさんずラブ視聴者の男女とは逆に、BLを忌み嫌う者のおもな理由は、二次創作などせず原作者の意圖通りに作品を純粋に鑑賞して貰いたいのであり、男キャラをありもしないカップルの設定で解釈されたくないという気持があるからだとおもいます。これは却ってゲイを冷やかす氣のないパッシングの姿勢なのかも知れません。それと同じ気持ちを、実は腐女子自身ももっています。オタクというのは、機械や生物について幅広く見識をもつマニアと異なり、大體は2、3のカプにのみ夢中なもので、ハマるにはゲイではない自身にとって抵抗のない二次創作の作品に出逢う必要があり、時間がかかります。腐女子の夛くは、リアルのゲイに抵抗がない譯ではなく、男キャラふたりに、あくまで男女カップルのような関係を投影するので、そこに落とし込む必要があるからです。

BLは70年代から、少女漫画において育まれてきた分野だからでしょうか、「受け」はまるで、女性読者が応援したくなる、がんばり屋のヒロインのように描かれることになります。ヒロインは性格が善く、夛くは昭和の母さんの樣に、粗野な「攻め」の諌め役に囘ります。料理を作り、時には子どもを授かります。
家事ができず酒浸りで売春もしているろくでなしの「受け」もたまにいますが、其れは上のような性質を前提にした面白いひねりでしかなく、同じ思考のうえにあります。

つまり、「受け」というヒロインに感情移入する女性読者にとって、自身が「攻め」として固定化した相手キャラが、逆に「受け」のようにかわいく描かれたり、「挿入」されたりするのは、非常にショックで、おおきな抵抗があるということです。
腐女子たちはあくまで擬似男女カップルとしてのBLを好みます。
うっかり作品の内實とは左右逆の表記をしてしまった者や、アンソロに逆カプを紛れさせてしまった者等へ、脅迫したり、暴言を吐いたりするので、「左右固定厨」「過激派」と呼ばれて恐れられることもある樣です。その樣な名前があるということ自体が、女性の脅迫行爲をひとつの生き方であるかの樣に承認していることになりはしないか、と心配ですが…

冒頭のおっさんずラブ視聴者のなかには、BLを奨んで見れる樣にならなければ、セクマイを受容する社会に出遅れる、ダサい、と感じて視聴しなければと努力してしまったので、BLとセクマイを同じに考えたのかも知れません。然しフィクションとリアルが全く関係無いのはいまに始まったことではなく、今後ともそうなのです。