どこまでも薄く

子どものとき耳にするようなポピユラーな心理テストに、「ケーキがあります。蝋燭は何本立つていますか」というものがあります。

もしこのテストを聞いたことがないひとがいたら、と想うので、念のため診断結果は画像の下に囘したいと思います。よければ答えを考えてみてからスクロールして下さい。












(ちなみに写真は、いつもunsplashさんから)









蝋燭は思い浮かびましたか?
蝋燭の本數は、一度に愛せる異性の數だそうです。

暗の場合、數え切れない蝋燭がつぎつぎと勝手に立ってしまい、結局「お店の蝋燭の在庫全部を余さず刺したい」と答えました。つまりわたしは世界中の男性を愛せるということになつてしまうのでしょうか。

江國香織さんの小説で「ケイトウの赤、やなぎの緑」という短編があります。ある平凡な会社員の女性と、博愛主義(決まつた恋人を持たないバイセクシヤルのスタイル)を名乗る男性との恋が展開されています。
女性は彼がモテること自体は受け止めているものの、博愛の思想については胡散臭いという気持ちを隠しません。ときには「この世のすべてが好きつてことは、好きなひとがいないつてことよ」と、鋭いツッコミを繰り出すのでした。
蝋燭が無限に立ってしまった時、わたくし自身も「好きなひとがいないつてことよ」というセリフを思い出し、グサッときました。
これを読んでいるなかにも、オールキヤラの同人誌を嗜み、「みんなだいすき」というじぶんに酔つている者は多少いるだろうなと思います。また文学の話ですが、『星の王子さま』を読み返してみましよう。






王子さまはじぶんの星に咲いた薔薇を愛していましたが、薔薇を残して旅に出て、地球にたどり着きます。地球には、じぶんの星に1本だけだと思つていたバラが無數に咲いているので、大變なショックを受けました。
その後、『星の王子さま』の重要なキヤラクターである狐と出会うのですが、最初はこういわれます。



きみとはおれは遊べないよ。おれは飼い慣らされていないから



狐がいうには、「飼い慣らす」というのは、相手がほかと違う、かけがえない存在になるということです。
彼らは「飼い慣らす」ということをするべく、いつもいつしよではなく、午後4時に会うことにしてみます。王子さまと狐は、ほかの男の子、そして狐とちがう足音を持ち始めただけでなく、午後4時がほかの時間とちがう時間になつたのでした。

また、狐は、ほかの無数の薔薇と、王子さまの恋人とが決定的に違うということも教えてくれました。




あんたが、あんたの薔薇の花をとてもたいせつに思ってるのはね、その薔薇の花のために、時間を無駄にしたからだよ



王子さまは美しさで誘惑してくる自信満々の薔薇たちに、こう言えるようになります。



「きみたちはぼくの薔薇とはぜんぜん似てないよ。きみたちはまだ何でもない。誰もきみたちを飼い慣らしていないし、きみたちだつて誰も飼い慣らしていないからね」