Laudanum

トーマス・ヘイガー著『歴史を変えた10の薬』にあったことですが、欧洲では羅馬時代に阿片が大流行したのち、再び近代になってから注目を集めました。きっかけはふたつの「Laudanum」という藥でした。






ひとつめは、15世紀のスイスの錬金術師パラケルススが、賢者の石と共に持っていたラウダナムです。
ラウダナムは鼠の糞のような見た目ですが、雄鹿の心臓の骨、ユニコーンの角、そして阿片など、たくさんの藥が配合されている丸藥で、アルコールによく溶けるので液体藥にもなりました。

ふたつめは、17世紀にイギリスのシデナムという医師が、パラケルススに敬意を表して名附けたカクテル、ローダナムです。
阿片をクローブやナツメグなどで香り付けされたワインに溶かした飲み藥で、19世紀には『阿片飲みの告白』のド・クインシーをはじめ、芸術家たちを虜にしました。彼らの作品を譯すとき「阿片丁幾」という日本語すらできたほど、一般に普及しました。

ほとんどの専門家が、阿片丁幾はパラケルススが生み出したものだというような言い方をします。しかしヘイガーによると、ふたつは名前が同じだけの別物で、趣きがまつたく異なるようです。かたや怪しげな鼠の糞、かたやおしゃれなカクテルなのです。