蟲+虫

YouTubeを視聴するなかで気づいたのですが、を好きなひとでも蟲を怖がる面があるようです。

わかりやすいのはクワカブを好きなタイプで、この層は蟲を好きというより、消極的に「クワカブならまだ平気」と言うだけなのです。百足や毒蜘蛛を愛する層さえ、Gは大の苦手のようです。

かつこよさと怖さは、紙一重なのかもしれません。


それまで、生き物が好きだと自称するひとが蟲を苦手がるのが、わたしにとって地雷でした。生き物をモチーフとする人気のブランド、Palnart Poc と EmiriA にさえ、蝶以外ほとんど蟲のアクセサリーがなく、蟲が嫌いな生き物好きなんて、と感じてしまうのです。けれども、蟲を好きなひとも苦手なひとも同じ人間で、実のところあまり変わらないのかもしれません。YouTube を視聴するうち、みんなある程度蟲が怖くて、だからこそ好きになるのだと感じました。









さて、わたしたち一人ひとりにとってどの生き物が可愛く、どの生き物がキモいかということは、文化そのものです。

もし「人文学」がどんな分野か想像がつかないというひとがいたら、なぜ昆蟲を好きなひとが家庭に出るGを苦手なのか考えてみると、文化という漠然としたものに手応えを覚えるでしょう。


蟲のなかには、大まかにこのような4つの文化層があるのではないかと思います。

蟷螂の層

鍬甲(クワカブ)の層

毒蟲の層

そして蜚蠊の層です。


蟷螂や田亀などの肉食昆蟲を観察していた里山の男子たちを、ここでは蟷螂の層としています。ポケモン、遊戯王、そして釣りを愛してもいます。自分に1種類でも知らない生物がいるのがいやだ、というプライドがあるかもしれませんが、それは分け隔てない優しさでもあり、純朴です。

昭和からずつと存在していたであろう蟷螂の層に遅れ、鍬甲の流行は平成になつてやつてきました。高級な鍬甲を求めるのが、2つめの鍬甲の層です。國産ならば、自身で採集したい蟷螂の層と被りますが、外國産ならほかの昆蟲にはほとんどまつたく関心がなく、数字にこだわるので、まるきり層が違います。發想が熱帯魚に似たバブリーなところがあり、おしやれなクワリウムを作るなどしています。

2001年に輸入が緩和され、蟲を飼う文化は一気に普及しました。ニユースとなっていた価格高騰はすっかり収まり、いまはネツトシヨツプやフリマアプリで、氣軽に外國の蟲も買うことができるようになつています。そうして新しく出現したのが、3つめの毒蟲の層です。蜘蛛のほか蠍や百足を飼うのが一般的です。この層のひとの外見の多くは、蟷螂や鍬甲と變わらず、特徴はないですが、両生類や爬蟲類を同時に飼つているひとのなかには、一部V系のストリートフアツシヨンに身を包んでいるケースも見られます。


さて、最後の蜚蠊の層だけ、蟲のかつこよさにあまり強いこだわりがない氣がします。蜚蠊の層のひとには生まれつき、生物學者の素質があったのではないでしょうか

食物連鎖に非常な関心があり、元々細菌や寄生蟲を研究していたひとが、蛙の餌にしていたレツドローチやデユビア、マダゴキを、不覚にも愛してしまつた、という声も聞きます。ほかの層との最大の違いは、蛙に与えるだけでなく、自身でも蟲を食べるという発想がある点です。ちなみに外見としては、夏でもカーデイガンやジヤケツトを着た、サイコパスふうの服装をしています。



ほかに人気の蟲には、蜂、蝶、玉蟲、源五郎などがいますが、それらはどの層のひとも平氣なようなので、ここでは語りませんでした。逆に、異様なほどだれからも忘れ去られているのはカメムシで、昆蟲好きの間では、蝉、アメンボなどのカメムシに近縁な仲間のことは、好きとも嫌いとも、あまり聞いたことがありません。