理化

暗は、テニスの王子様の乾貞治の様な、分厚い眼鏡を逆行に光らせるケミカリストを二次創作して居ます。レベルEだと、サド隊員は特にアニメで昆蟲に興味がある描写があつたので、ストライクです。それで化學系の派遣先を選んだのですが、結果的に創作する人間にとつて理想の職場だとわかりました。
職場が理系の大卒許りなら、社員は概ね浮世離れの天然だらけです。これまで文系のサービス業しか経験しなかつたひとに、ハラスメントのない職場というものが確かにあることを、傳えたいと想います。

理系には概ね差別がなく、その例外は3つだけです。
ひとつめは品質保証部や、製造部の點検の担当です。このひとびとは、安全教育を徹底できない者を炙り出す爲に行つてしまい、優生論的です。
ふたつめは高卒や専學卒です。高校の文理選択が折角理系でも、「黒ハイソは人間、白ハイソは非人」「運動部は上、文化部は下」という様なレイシズムを捨てることができて居ません。
みつつめは機械系など経営者のネトウヨ率が高い職場です。純日本人であることを誇りにしてしまうので、仮令工學の専門家でも、精神的にはよくいる文系に過ぎません。

異動のない派遣社員であれば、ハラスメントに悩む紳士淑女は、これらのひとびとが多いと思しき派遣先を避ければ問題ないのではないでしよう乎。










派遣會社の営業や、採用担当の者はこちらが文系だと知つていますが、社員に對しては、山師トマの様なごつこ遊びはまだバレないどころか、矢張り理系になりすましたほうが會話が盛り上がり、相手を樂ませることが可能だと實感して居ます。

わたくしの様なある程度日常で暗算する氣があつて、昆蟲を愛する者が文系だと告白するほうが、余程嘘だと思われ、氣障なやつだという空氣になることでしよう。


漫画に出てくる理系の人物が好きだつた、と云うだけで挑みましたが、いま省みれば、こういうことを知つて居たら、より自信がもてて挙動不審をなくせたのに、ということが有るので、紹介したいと思います。
とはいえ文系が化學メーカーに勤めるだけで、もう理系と思い込まれるので、演技はしないほうが善いでしよう。







・ルール遵守
學校では、校則は破られる爲のフリでした。教師は頭の良い生徒を煙たがり、惡いことをするよう教える者さえ居たと思います。然し工場では、研修で教わる安全教育は、本當にひとつも漏らさず身につけなければ、首になるもの許りなのです。グリーンベルトと呼ばれる緑の歩道だけを歩くこと、ゴーグルや革手袋などの保護具を使う場面があること、階段で手摺りに摑まることなどを徹底しなければなりません。それが思いやりなのか、空虚な正義なのかを見極める必要はありますが、前者の社風ならばその工場には長く勤める価値があるでしよう。


・5S
理系というより、メーカーの基本的理念なのですが、勤務の前に暗記しておいたほうがいいことがあります。「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5S:ごえすです。此れはいきなり入社時の研修で「いままでの職場でもあつたよね」と確認されます。


・pHメーターを使うのは簡単
pHメーターは數値が低いと酸性、高いとアルカリ性であることを示す機械で、この數値は粘度に関わる重要な要素ですが、機械は本體とコードで繋がれたガラス若しくはプラスチツクの棒だけでできており、使い方も単純です。電源ボタンを押し、棒で液體を軽く混ぜる、というものです。なので、經驗を尋ねられたら「よく使いました」と答える必要があります。校正のやり方をここで解説することはできないので、校正だけは前職のものと違うかもしれないと云つてやり方を尋ねたほうが良いです。


・「ビニール」は禁句
化學系では「ビニール」と云う言葉を避けています。それは、ビニ手やビニール袋等はほぼ確實にポリエチレンまたはポリプロピレンでできていると断言することができ、塩化ビニルである可能性はかなり低いからなのですが、文系はつい「ビニール」と云つてしまいます。理系は用語には敏感になつて居り、いつそ目を擦らないのと同様に、ビニールと云う言葉を生涯口にしない様、誓いを立てた方が早いでしよう。但「ビニールテープ」だけはよく使うので、ひとつひとつの道具について、其を社員がビニールと呼んでいるかどうか様子を見てください。


・ゴム手は「ニトリル」 ビニ手は「サニメント」
ビニ手と云う物が存在しないのなら、なんと称ぶのでしよう乎。職場によるのですが、「サニメント」等商品名で呼称されていると思います。ビニールではなくポリエチレンでできています。然し手袋は、サニメントよりも囘転する機械に巻き込まれにくいゴム手のほうがより多く使われて居り、此れも職場によつて「ニトリル」と称ばれることが有ります。


・實験は「試験」
派遣會社の営業の者が「實験」と呼ぶものは、工場では大概「試験」と呼びます。それでは同じ意味なの乎と云うと、實験とは、ある程度未知のことについて仮説を立て、それが合つているの乎試すことであるのに對し、試験では、それまでの試験結果の數値などに近づいたほうが良い、と云う違いが有ります。學校のテストは、満点に近いほうが良いので試験なのです。


・「溶剤」は多分シンナーのこと
工場で「有機溶剤」「溶剤」と呼ばれているものはほ殆どシンナーのことでした。新人に「溶剤の取り扱い経験は?」と話す社員は、要するにシンナーの臭いは大丈夫乎と聞きたいだけなので、知識がなくても身構える心配は要りません。


・洗浄瓶は辯を倒して使う
ポリ瓶に長いノズルが附いている物は洗浄瓶と云うそうですが、「センビン」か、中身の名前で呼ばれることもあります。シンナー若くは水等が入つており、瓶を持つ手で壓迫し、中身を吹き出させて洗いたい物にかけます。このとき蓋のところの辯が倒れていなければ吹き出にくいのですが、此れは辯を倒すとガス抜きが閉じており、壓力がかかりやすく、辯が倒れていなければ、ガス抜きの状態となつているからです。


・ビーカーは横から持つ
派遣社員がガラスの實験器具を扱う機會は尠いと思います。然し、若し絡むことがあれば、ビーカーをバーボンかなにかのように上から摑んで持ち上げるのではなく、横から持つ様にする必要があり、こうした仕草は、咄嗟なことでも完璧にできなければいけません。最初は氣疲れして身につかず、首を切られましたが、2つめの派遣先ではもつと好く立ち囘れる様身について居ました。


・理系はGやマウスが苦手
最後は朗報です。生き物が苦手なままで就職できる、と云うより、苦手な儘でなければ浮くでしよう。バイオ系なら話は別かも知れませんが、尠くとも化學メーカーにおいては、釣りをする者さえ居らず、まして昆蟲採取など誰もして居ません。敢えて蟲や鼠を克服する必要はないので安心して下さい。